2022年9月25日 歩行距離 17㎞ 所要時間 6時間43分
今日は6時半に朝ご飯を食べ、7時に宿を出発。
晴れ渡った青空で絶好の山登り日和。
そんな天気とは裏腹に山登りでは散々な目にあった。
死ぬかと思ったけど宿では暖かく迎えてもらい疲れも吹き飛んだ。
碌な目に合わなかった12番焼山寺
藤井寺境内にある焼山寺の山道入り口までは、昨日下見をしていたのでスムーズに行った。
天気にも恵まれ、綺麗に整備された山道を歩く。
めちゃくちゃ気持ちがいい~。
旅館吉野でおいしいご飯を食べ、お風呂とふかふかの布団でぐっすり寝て元気いっぱい。
山登り開始20分で道を間違えて下山
早朝の山は空気も澄んでいて最高だ!
20分ほど登ると右と左に道が分かれている場所に出くわした。
道しるべがあり左を指していたので単純に左の道を歩き始めた。
もう登りが終わったのか、ゆるやかな下りになり楽ちんで楽しい!
ルンルン気分で歩いていたら、一人の地元のおじいさんとすれ違い、挨拶を交わした。
何事もなくすれ違った後、いきなり後ろから大声で呼び止められた。
ちょっと、あんたっっ!
はい?!
道間違えてるよ。
はっ?????
ちゃんと道しるべの方向に来ましたよ。
道が間違っているなんてそんなはずはないのだ。
ちゃんと道しるべの指す方向を確認して歩いて来たはずなんだから。
正しい道のところまで連れて行ってやるよ。
あんたが前から歩いてきたときちょっとおかしいとは思ったんだ。
後ろ振り返ったらあんた菅笠つけてたから、やっぱりお遍路さんだと思って道間違ってるのがわかったんだよ。
にわかに信じられない。
おじいさんと一緒に今歩いて来た道を戻りながら、道しるべは確かにこの道を指していたことを力説した。
あの道しるべわかりにくくて、ここを散歩しているとあんたみたいにこの道歩いてくるお遍路さん、たまにいるよ。
5分ぐらい歩いて、さっきの道しるべのあるところまで戻ってきた。
どうやらすぐに左の道に行くのではなく右側の道を少し行ってから左に曲がるという意味らしい。
この道しるべ紛らわしいんだよ。
ここに一本左側の道を書いておけば、ここから少し道なりに歩いてから左に曲がるってわかるのにさ。
おじいさんが言うように書けば私も間違った左側の道を選ぶことはなかった。
でも、私の後ろに一組のご夫婦が歩いていたけど、途中で会わなかったのでその人たちはちゃんと間違わずに正しい方向に行ったんだよね。
わかる人はちゃんとわかるのか???
どうしてこれでわかるの???
倒木や枝が散乱。人もいなくて孤独な山道を歩く。
山登り開始20分で下山していたなんて我ながらショックだ。
天気はいいけど、気持ちが晴れない。
開始早々道しるべを信用できなくなってしまった。
この先不安しかない。
なんか気が重い…。
こんなにわかりやすくいくつも道しるべがあるし、道も1本しかないんだから間違いようがないはず。
さっきがたまたま間違えてしまっただけ。
焼山寺で道に迷って遭難したなんてそんな情報聞いたことないし。
「慎重に確認しながら行けば大丈夫。」、と自分に言い聞かせながら歩いていると水大師に着いた。
こういうポイントがあるとめっちゃ安心するわ。
宿で汲んできた水を捨て、この山水に入れ替える。
冷たくておいしい。
しばらく歩くと長戸庵に到着した。
よしよし、順調順調。
長戸庵から次に続く道は一本道で道しるべもある。
小枝が道いっぱいに落ちていて歩きにくいけど山だから仕様が無いよね。
木も倒れていて道をふさいでいるけど、山だしそんなもんだよね。
日差しが差し込んで明るいけど、まったく人がいなく、枝が散乱した道はなんか薄気味悪い。
最初は道間違ったらどうしようと思っていたけど、ずっと一本道でそんな心配も杞憂に終わった。
長戸庵から1時間ほど歩いて柳水庵に到着。
人の気配がないせいか、静かすぎてやっぱり薄気味悪さを感じてしまう。
ここは神聖な場所なはずなんだけど、清らかな空気というよりかはなんか幽霊とか出そうな雰囲気で怖い。
ここから少し歩くと柳水庵の休憩所に着いた。
ここは開けた場所で明るくて気持ちがいい。
ちょっと早いけどお昼ご飯を食べることにした。
ずっと、木々が生い茂った場所を歩いて来たから、視界が開けてほっとする。
小屋の縁側に腰かけておにぎりをほおばると、塩気が疲れた体に染みていく。
うまいっ!!!
おにぎりパワーは偉大だな。
30分ほど休憩を取り焼山寺へ向けて歩き出す。
ここまでで大体半分の距離とのこと。
ぜんぜん余裕だ。
やっと人に会えた
休憩しておにぎり食べたらもやもやしていた気分も今日の青空のように晴れた気がした。
小枝や石ころが落ちているので転ばないように足元に気を付けながら一歩一歩山道を登っていく。
登りはきついけど、森林浴を楽しみながらゆっくりのんびり歩く。
楽しいな。でも、しんどいかも。
木の根っこに足を引っかけたり、岩の上で滑って転びそうになったり、なかなかスリリングな道だ。
トレッキングポールに力を入れ、体を支えながら何とか転ばずに歩く。
ハァ、ハァ。息が切れる。
しんどい登りを黙々と歩くこと1時間。
ふと顔を上げた瞬間。
おーっ。
視界の先にはお大師様が!
一気に疲れが吹き飛んだ。
待ちきれなくて階段を駆け上る。
ただただ感動。
「ここまでよく頑張って登ってきたね。」ってお大師様に労いの言葉をもらった気がする。
お遍路歩いているんだって実感が湧いてきた。
一通り写真を撮った後、近くのベンチに座って休んでいたら、続々とお遍路さんがやってきた。
ずっと人いないなと思っていたけど、結構いるんだな。
外国の方もいた。後で判明するんだけどドイツ出身とのこと。
ちょうどお昼時でみんなご飯を食べるために休憩を取るので座る場所がなくなってきた。
そろそろ出発しようかな。
精魂尽きたロッククライミング
相変わらず天気もよくて、きつい登りもあるけどすごく楽しい。
途中チェーンソーを持ったおじさんが、すれ違いざまに何か言った。
まだね、終わってなくて○!※□◇#△!
最後まで聞き取れないまま、忙しそうに焼山寺とは逆方向に行ってしまった。
この時のおじさんの言っていたことが後になって重要だったと知ったのは焼山寺を下山した後だった。
途中集落のようなところがあり、猫もいた。
川の水の色がきれいだ。
川を渡ってからしばらく歩くとなんとここで道がなくなってしまった。
行き止まりだ。
ただ、急斜面に敷き詰められた石が道のようにも見える。
こんなとこが道なのかな。
でもここ以外道はないし。
あたりを探してもどうしても他に道らしきものがない。
意を決して急斜面を登る。
これが地獄の始まりだった。
何度もおかしいとは思ったんだけど…
8㎏近くあるバックパックを背負い、この急斜面を登る辛さときたら。
おかしい。
こんなのが道なわけない。
10分ぐらい登ったけどいったん降りて元の場所に戻った。
もう一度あたりを見るけどやっぱりここ以外道はない。
やっぱりここしかないのか…。
もう一度降りてきた急斜面を登りだす。
斜面に這いつくばって登る体制になるので、長いポールが邪魔になってきた。
長さを短くするのにもこの急斜面では一苦労だ。
でも、気持ちを強く持って一歩一歩慎重に登っていく。
斜面の途中にペットボトルが落ちていたり、誰かが通った形跡がある。
大丈夫だ。この道で間違いない。
背丈ほどある草や木の枝をかき分けながら進んでいく。
しばらく登っていると下のほうから鈴の音が聞こえてきた。
よかった。誰か登ってきた。
やっぱりこの道であっているんだ。
鈴の音に勇気をもらい、木の枝をくぐり、草をかき分け一心不乱で登っていく。
あと数メートル登ると途中に境目みたいな場所がありその先に道がありそうだ。
やっとそこに辿り着く。
愕然とした。
その先は道なんかじゃなく見渡す限り崖が続いている。
そういえばあの鈴の音はもうしていない。
おかしい。
こんなのありえない。
戻るしかない。
もう死んでしまえ
崖を降りると決めたけど、もう気力が残っていない。
慎重に一歩一歩ずつなんて、とてもじゃないけどできない。
もう何も考えられない。
どうにでもなれ。
8㎏のバックパックと体が重力に引っ張られるままに転がり落ちていく。
登るときは慎重に丁寧に足場を確かめながら登って行ったのに、もうそんな気力はない。
このままではケガをするかもという考えは浮かぶんだけど、何とかしないとという気持ちが沸かない。
恐怖心もなにも感じない。
心が停止してしまって、もう何にも考えられない。
ただ重力に任せて転がり落ちていくだけ。
気づくと元の場所に戻っていた。
首にかけていたタオルは無くなっていて、バックパックもズボンも靴も顔も全身泥まみれだ。
道しるべ発見!
このままだと元来た道を戻るしかない。
元来た道から続くだろう先には折れた木の枝の塊でふさがっている。
見る限りこの先に道が続いているとは思えない。
崖が違うとなると、ここ以外考えられないんだよな…。
意を決して、もう一度木の枝の塊を乗り越えて草木をかき分けて進んでいく。
崖を登るより楽だけど、この先に道があるとは思えないんだけど。
あっ、道しるべだ!!!
な、な、なんと道しるべ発見!
大量の木の枝で道が塞がれているだけだった。
あの時、崖を登る前にこっちの道をもうちょっとだけ進んでいればこの道を発見できたのに…。
こんな苦労することなかったのに…。
焼山寺到着するも続く災難
この後は順調に迷うことなく焼山寺に辿り着くことができた。
へとへとになりながら本堂へ続く階段を上る。
「ガシャーン!!!」
なんと、さっき水を入れたばかりの水筒がバックパックのサイドポケットから落ちてしまった。
盛大な音とともに豪快に割れ、あたり一面に中身の水と水筒の破片が散乱している。
周囲の視線を感じながら水筒の破片を拾い集める。
あ~、せっかくの水が。
水筒も粉々だ…。
ついていないな…。
私はお遍路始まって3日目にしてタオルと水筒を失くしてしまった。
がっくりだ。
自販機で水を買って、さっさとお参りをすませる。
焼山寺はとっても素敵なお寺なんだけどな。
立派な杉の木が壮観で、自然と調和した雰囲気が好きなんだけどな。
こんなに不運続きだと焼山寺に嫌われているとしか思えないよ…。
焼山寺の境内で、歩き遍路のおばあちゃんとお孫さんとお話をした。
おばあちゃん、80歳くらいに見えたけどあの遍路ころがしを徒歩で登ってきたとは、なんて脚力と体力なんだろう。
「途中、道に迷ったりしませんでしたか?」って聞いたら、まったく迷わなかったとのこと。
おばあちゃん、すごすぎる。そして自分が情けない…。
下山。鍋岩へ。
14:48、今日の宿「もりあんロフト」に向けて下山開始。
まだ1時間近く歩かないといけない。
帰りは一本道の下りでなにも考えずただ歩くだけ。
ぼーっと歩いていると、途中から一人のお遍路さんと一緒になった。
浄蓮庵で休憩中に会って今日の宿について少し話をした人だ。
さらに、話をすると2日目、3日目の宿が同じことが判明。
そして、昨日の夕食の席が隣にいた人だった。
さらに、私がロッククライミングで死にそうになっていた時に聞こえてきた鈴の音の主だった。
最初、ここが道だと思って登ったけど、途中でこれは明らかに違うなと引き返したんだ。
私にはその判断がすぐにできなかったんだよな。
経験値の差なのかな…。
茨城県の方で、仕事の休暇を利用してを別格を含めた108か所を区切り打ちする予定とのこと。
話しながら歩いていると楽しくてあっという間に杖杉庵に着いた。
この話、越久田屋の住職からも聞いたし、この後、もりあんロフトの女将さんからも詳しく聞くことになる。
徳島の人で括るのは短絡的だとは思うけど、この衛門三郎の話、徳島の人好きだよな。
杖杉庵から30分ほどで鍋岩に到着。
茨城の男性はさくらや旅館に泊まるとのことでここでお別れだ。
すごく物腰が柔らかく、優しい雰囲気で結婚するならこんな人がいいんだろうなって思うほど素敵な人だった。
残念ながらこの男性とはもう会うことはなかったけど。
もう一人浄蓮庵で会った男性で、なんか嫌だなって思った町田市の男性がいたんだけど、その人とは高野山まで何度も会うこととなった。
人生って思い通りにいかないよな。
4日目まとめ 終わり良ければ総て良し
15:52、やっと宿に着いた!!
宿では、女将さんが出迎えてくれた。
今日の宿泊者は私一人ということで、一番広い部屋が私の部屋。
最高じゃん!!
農園ゲストハウス もりあんLoft
女将さん一家は本業がすだち農家とのことで、この宿の建物は倉庫を改装したそうだ。
女将さんたちは1階に住んでいて、料理も下から持って来ていた気がする。
すだち農家ということで、料理にはすだちが添えられていてさっぱりしていておいしかった。
お風呂はユニットバスで自分でお湯をいれて入る感じ。
ただ、何人か人数がいると車で神山町の温泉に連れて行ってもらえるみたい。
女将さんとたくさんおしゃべりしてすごく楽しかった。
- お遍路経験豊富な女将さんにいろいろ相談できる
- 部屋は清潔。共有スペースも居心地がいい
- 焼山寺に近い立地
- カップ麺や飲み物の購入可なので素泊まりで宿泊すれば経済的
- 神山町の温泉施設への送迎あり
- 周囲にお店はない(宿内で購入可)
- お風呂がユニットバスで小さい(温泉施設への送迎あり)
カップ麺、ジュース、お酒が販売されており価格も良心的。
素泊まりが3,000円なので、ご飯を付けなければかなり安く済ますことができるよ、とのこと。
宿内にはカップ麺とか売っていて女将さんに相談すればお店とかにも連れて行ってくれそうな雰囲気だった。
綺麗に掃除されていて快適。
品数が多く、お腹いっぱいになった。
お酒を飲む人を想定しているみたい。宿内でもお酒がいっぱいあり購入可。
ご飯は炊飯器から自分で好きなだけ盛る形。
右上のおにぎりと飴は袋もついていて昼食用に持って行った。
コーヒーやお茶、飴などちょっとしたものはご自由にという感じで置いてあった。
とにかく快適だったな。
もりあんロフトの女将さん
女将さんはお遍路の超ベテランで、中国の青龍寺にも行ったそうだ。
すごく親切で経験豊富でこれから先のことをいろいろ相談でき、このタイミングで出会えて本当によかった。
道しるべを見落としてしまうことや、焼山寺での崖登りで大変な目にあったことを話したら、こちらのブログを教えてもらった。
札所間の行程が入ったGoogleMapがあり、この行程をそのまま自分のGoogleMapに落とせるので、この先すごく重宝した。
4日目 使ったお金
ずっと山の中だったのでお金を使う機会がなかった。
・交通費 0円
・宿泊費 6,000円 1泊2食
・洗濯代 100円
・食 費 110円/自販機水110円
・御朱印 300円(12番)
・その他 0円
・合計 6,510円 4日目までの合計 33,206円
今日の日記
焼山寺への登山道に、やけに倒木があったり折れた枝が散乱してたのは、私が四国に入る前の週にすごい台風が上陸していて大荒れだったためらしい。
途中チェーンソーを持ったおじさんが、
まだ終わってなくて○!※□◇#△!
と言っていたのは、まだ登山道の整備が終わってないって意味だったんじゃないかな?
まさか、一週間前の台風でこんなことになってるなんて、北海道からきた私には知る由もないよ。
でも、焼山寺を過ぎてからは楽しいことばかりだった。
ケガもなく無事に宿まで到着でき、素敵な女将さんにも出会えたわけで、いい1日だった。
よく登山は下山中に事故が多いって聞くけど、今回のことでその理由がよく分かった気がする。
下山時のほうが体を支えるために登りよりも慎重さが必要になる。
さらに、登りは頂上を目指すという目標があるけど、下山は目標を達成して気が緩んでしまったり、疲れている状態だから、気力が保てないんだよね。
こんな気力すっからかんで体力も消耗している中で、さらに慎重に注意して下山なんて無理だよ。
もう、死んでもいいと思ったもん。
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