歩き遍路9日目|国道55号、ただ歩くだけの一日。疲れと孤独が並んでいた

2022年9月30日

朝4時を少し過ぎたころ、目が覚めてしまった。
美脚お遍路さんから「俺、いびきうるさいから」と言われて身構えていたけれど、耳栓をして寝たおかげか、まったく気にならなかった。

この宿にはレギュラーコーヒーが置いてあり、それがとてもおいしい。
久しぶりにちゃんとしたコーヒーを飲んだせいか、朝からマグカップで3杯も飲んでしまった。

目次

朝焼けの屋上で再会、自転車と歩きの距離感

日の出に合わせて屋上へ行く。
今日もいい天気になりそうだ。

屋上からの朝日

ぼんやり朝日を眺めていると、昨日チェックインのときに見かけた自転車女子が、下のベランダにいた。

「チェックインしてから見かけなかったから、どこに行ったのかと思ってました」と声をかけると、女性専用のドミトリーに一人きりで、とても快適だったと言う。
美脚お遍路さんが「同じ部屋は嫌だから宿を変えた」と言っていたことを伝えると、彼女は笑っていた。

彼女は有給休暇を使って、自転車で四国を一周しているらしい。
お父さんも自転車乗りで、その影響で自分も乗るようになったとのこと。
今日は室戸岬まで行く予定だという。距離は約100km。
歩きなら3日がかりの距離でも、自転車なら1日で余裕だそうだ。

国道55号、ひとり歩く。景色はきれいなのに、心が動かない日

7時少し前に宿を出発。美脚お遍路さんは、もう少しゆっくりしてから出るとのことだった。

今日から三日間は、道に迷うことのない国道沿いの道。
山の中を走る国道55号線を、ただひたすら歩く。

1時間もするとさすがに飽きてくるが、それでも一歩一歩、前に進むしかない。

美脚お遍路さんが追いついてくるかなと思っていたけれど、昨日とは違って、誰一人追いついてこない。みんな、もう先に行ってしまったのだろうか。

思い返してみると、昨日は人と話し、景色も次々に変わっていったから、足取りも自然と軽かった。
けれど今日は違う。一人きりで、ただ前へ進むだけ。自分と向き合っていると言えば聞こえはいいが、実際には少し味気なく、単調な時間だった。

そんなふうに黙々と歩いていると、自転車が一台、風を切るように横を通り過ぎ、あっという間に視界から消えた。

宿で顔を合わせた、あの自転車の彼女だった。

自転車というのは、すごい。あの速度で駆け抜けていけることが、歩く自分とはまったく別の次元の出来事のように思えて、すごく羨ましかった。

途中でパン屋に寄り、昼食用のパンを購入。牟岐町に入ると遍路小屋があったので、そこで食べた。コロナの影響で「お接待所はお休みです」という場所が多い。

牟岐町を過ぎると、海が見えてきた。
視界が一気に開けて、思わず足を止める。

山の中とは違って、海は終わりが見えない。
その広がりは、ただの風景ではなく、未知なるものへの可能性みたいなものを感じさせる。

水平線の向こうに何があるのかは分からない。
でも、まだ知らない場所が続いていると思うと、少しだけ気分が上がる。

この先は、海沿いの道路を歩く道が続く。
舗装された道路の脇には、ときどきへんろ道の入り口がある。

へんろ道

最初は、へんろ道のほうを選んで歩いていた。
海沿いの山道や浜辺を通る道で、景色がきれいで気持ちがいい。
こうやって自由に歩いて旅ができることが、じわっと嬉しくなる。

途中、別格霊場四番札所の鯖大師にも立ち寄った。
ただ、このあたりは疲れていたせいか、あまり記憶に残っていない。

別格霊場四番札所鯖大師

だんだんと疲れがたまってきた。
へんろ道は景色はいいけれど、山道なので上り下りがあり、距離も長くなる。
そのうち、楽な舗装路を選んで歩くようになった。

海南町に入り、海沿いを離れると、また景色が変わる。
川が流れていて、海とは違う落ち着いた感じがあった。

それでも、やっぱり疲れていた。
何度もスマホで地図を確認する。
まだ宿までは距離がある。

きれいな景色の中にいるはずなのに、だんだんそれを感じる余裕がなくなっていく。
疲れてくると、頭が回らなくなって、何も考えずにただ足を前に出すだけになる。
せっかくここまで来ているのに、それをちゃんと味わえていないのが、少しもったいなく感じた。

午後3時を過ぎて、ようやく今日の宿に到着。

国道55号線をそのまま歩けば約27kmのはずだった。
でも、へんろ道にそれた分、気づけば30km近く歩いていた。

宿に着いたころには、もうすっかりへとへとだった。

ちょうどいい孤独は、なかなか見つからない

宿は、正直いまひとつだった。
普通の家の一室で、宿の人の対応もどこか淡々としていた。

お風呂も、少しぬめりがあって、掃除が行き届いていない感じが気になった。

部屋にトレイがあったのは便利だったけれど、ゴミ箱に使用済みの生理用品がそのまま残っていて、回収を忘れたんだろうなとは思いつつも、やっぱり気分は下がった。

宿の近くにスーパーがあったので、そこで夕食を買う。

疲れているせいか、なんとなく気持ちも落ちてくる。

ただ疲れているだけなのか。
それとも、一日中ほとんど誰とも話さず、黙々と歩いていたからなのか。
昨日のあの軽い気分とは、まるで違う。

あとで写真を見返すと、景色は昨日と同じくらいきれいだった。
それなのに、今日はあまり楽しめていなかった気がする。

ずっと誰かと一緒にいたいわけじゃない。
むしろ、一人で歩くほうが気楽だと思っている。

でも、道でたまたま出会った人と少しだけ一緒に歩いて、話をして、またそれぞれのペースに戻る。
一人に少し飽きたころに、また誰かと少しだけ歩く。
昨日は、そのバランスがちょうどよかったのかもしれない。

ずっと一人で歩くのも、思った以上に疲れる。
かといって、ずっと誰かと一緒にいるのも、それはそれで疲れる。

そのちょうどいい加減を見つけることが、旅を楽しむコツなのかもしれない。
そしてそれは、そのまま人生にも当てはまるのかもしれないと、ふと思った。

2022年9月30日金曜日
歩行距離 約30km
所要時間 8時間16分


使ったお金5,636円 9日目までの合計 60,034円
・交通費 0円
・宿泊費 4,800円(ゲストハウスふくちゃん 素泊まり)
・洗濯代 0円(洗濯機無料)
・食 費 836円/パン2個160円、夕食 サンシャインモアナで購入 548円、コンビニ 128円
・御朱印 0円
・その他 0円

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