2022年9月28日水曜日
今日は、まさかの深夜2時半起床。
一度トイレに行って布団に戻ったものの、目は完全に覚醒してしまった。
眠れそうにないまま時計を見つめ、結局3時少し過ぎに起床。
「どうしてこんなに眠れないんだろう…」
とは思うけれど、不思議と日中はそこまで眠くならない。
体は確実に疲れているのに、脳だけが妙に元気。
これも遍路あるあるなのだろうか。
登って、迷って、祈って、歩き切った
7時前に「ふれあいの里さかもと」を出発。
昨日迎えに来てもらった道の駅「ひなの里・かつうら」まで、車で送ってもらった。
次の宿は素泊まりのため、近くのファミマへ立ち寄りカップヌードルとパンを購入した。
今日の行程には、途中で食料を調達できそうな店がほとんどない。
ここで買っておくしかなかった。
山歩きの負担にならないよう、軽くてかさばらないものを選んだ。
今日は「一に焼山、二に鶴、三に太龍」と言われる難所のうち、
二番目と三番目にあたる行程だ。
さらに20番鶴林寺への登りも含めると、
この日は「登って、下りて」を合計3回も繰り返すことになる。
20番鶴林寺|雨の登り坂でかけられた、ベテラン遍路のひと言
鶴林寺へ向けて、山道を歩き始めた。
なんとか持ちこたえていた天気も、登り始めてしばらくすると限界を迎え、ぽつり、ぽつりと雨が落ちてきた。

雨具を着るため東屋に立ち寄り、ザックを下ろして中身をごそごそ探っていると、同じ宿に泊まっていた、夫婦で遍路をしている奥さんも東屋に入ってきた。
彼女は私のザックをちらりと見て、どこか懐かしそうに目を細めた。
「荷物、ちょっと多いかもねぇ」
「これでも、だいぶ減らしたんですよ。最初はもっと多かったんです。」
そう言うと、彼女は「わかるわかる」とでも言うように、くすっと笑った。
旦那さんの荷物は、私のものと同じくらいに見えた。
夫婦で共有している物も多いだろう。
奥さんがあれほど軽やかに歩けるのは、旦那さんがさりげなく支えているからなのかもしれない。
確かに、私のザックにはまだ余計な物が入っている気がする。
それでも、今はこうして一人で背負って歩いているのだから、これでいい。
そう思うことにして、私は自分を納得させた。
その後、雨がぱらつくことはあったものの、本降りにはならなかった。
空は曇っていて、暑すぎず寒すぎず、歩くにはちょうどいい。

九時前、二十番札所・鶴林寺に到着する。
するとちょうどそのとき、例の荷物がやたらと大きいお遍路さんが、黄色地に黒のストライプが入った、まるでブルース・リーの衣装のような服を着たおじいちゃんと一緒に、鶴林寺を後にするところだった。
あの人こそ、「荷物が多すぎる」と言われるべきだ。
心の中でそう思いながら、気づかないふりをして、声もかけずに通り過ぎる。
雨は止んでいたが、霧のせいで湿気がひどい。
汗は滝のように流れ、首に巻いていたタオルは、すでに絞れそうなほど濡れていた。

21番太龍寺|歩き方がきれいな人と、ひとつの内緒の願い
21番・太龍寺までは、思っていたより早く、3時間とかからずに着いた。

道中、何度か短パン姿のお遍路さんとすれ違った。
背筋はすっと伸び、歩幅にも無理がない。短パンという軽装も相まって、なぜか印象に残る人だった。
昼にしようと東屋に立ち寄ると、その人がいた。
見かけるたびに思っていたことが、口をついて出た。
「歩き方、きれいですね」
一瞬きょとんとしたあと、驚くほど素直な笑顔が返ってきた。
その表情を見て、心の中でそっと名前をつける。
美脚お遍路さん(男性)。
宿で用意してもらったおにぎりを食べ、胃を落ち着かせる。
太龍寺へ続く道はよく整えられていて、足取りも自然と軽くなった。

正午前、太龍寺に到着。
本堂で手を合わせながら、常楽寺の猫たちの無事と、
それからもうひとつ、かなり私的な願いを添える。
――どうか、あの荷物の大きいお遍路さんに、もう会いませんように。
そして一昨日手渡され、ずっと持っているのが嫌だったそいつの納め札を、
お札箱へ、静かに滑り込ませた。

焼山寺の既視感―また道を誤る
太龍寺の納経所で御朱印を書いてもらったとき、住職に声をかけられた。
「この時間に歩きで鶴林寺を打って、ここまで来られたなら、いわと道でもまったく問題ないよ。入口はロープウェー乗り場の方にあるし、カップ麺のお接待もしてるから、寄っていくといい。」
その言葉に背中を押され、ロープウェー乗り場へ向かった。
だが、カップ麺どころか、お接待らしき雰囲気はまるでない。
ベンチに腰を下ろし、しばらく様子を見てみたが、誰からも声はかからなかった。
「自分から声をかけるべきだったのかな……」
一瞬迷ったものの、さっきおにぎりを食べたばかりだ。
結局、そのまま歩き出すことにした。
――そして、ここでまたやってしまった。
歩き遍路用の地図をGoogleに落とし、それを頼りに歩いていたのだが、
そのGPSを、少し信じすぎていた。
GPSが示した先には、たしかに道のようなものが見える。
だが進むにつれて足元は荒れ、やがて丈の高い草に行く手を塞がれた。
どう考えても、これ以上は進めない。

「これはさすがにおかしい」
そう思いながらも、GPSの矢印だけは、頑なに先を指し続けている。
焼山寺で味わった、あの嫌な感覚が、はっきりとよみがえった。
うんざりした気持ちで来た道を戻る。
画面を見ると、GPSはやはり戻ってきた方向を示している。
人が歩いた跡のようなものも、短いけどたしかにある。
けれど、先へはどうしても進めない。
結局、ロープウェー乗り場まで引き返し、事情を話した。
「ちゃんと整備された道を、道しるべ通りに行けば迷うことはないですよ」
拍子抜けするほど、あっさりした答えだった。
半信半疑のまま、今度はGPSを見ずに歩いてみる。
道しるべは見当たらないが、仏像が道沿いに静かに並んでいる。

それに従うように進んでいくと、やがて案内板が現れた。

おそらく、山の中で電波が弱く、
GPSがズレていたのだろう。
GPSは万能ではない。
スマホだけを見ず、目の前に広がる状況もきちんと確かめないと。
日没との戦い、そして敗北
この道間違いで、かなりの時間をロス。
12時前に太龍寺に着いたのに、
正しい道に入れたのは13時半近くだった。
道はきれいに整備されていたが、山道は暗く、
太陽が傾いていくのがはっきり分かる。
刻一刻と日没が迫ってくる。

やっと山道を抜けたのは16時半過ぎ。
のどかな田舎道に出たときは、心底ほっとした。

でも、22番・平等寺の納経所が閉まる17時には間に合わない。
そのまま宿へ向かうことにした。
日の丸商店|太龍寺の願いは却下、宿は当たり
宿に着いたのは17時をとうに過ぎていた。

女将さんに
「遅いから心配してたのよ」
と言われ、申し訳なさでいっぱいになる。
「夕飯、コンビニ連れて行くよ」と言われ、
すでにカップ麺を買っていることを伝え、
**朝、買わなきゃよかった…**と静かに後悔。

この日の宿泊者は3人。
残念なことに、その中に
荷物の大きいお遍路さんが含まれていた。
太龍寺での願いは、即日却下された。
もう一人は、あのブルース・リー風の黄色い服のおじいちゃん。
宿は最初に「山茶花」へ電話をかけたのだけれど、あいにく休業中。
その際に紹介してもらったのが、日の丸商店さんだった。
素泊まりだけど、
お接待で朝食用のパンをいただき、洗濯機も無料。
「女性一人だから」と一番広い部屋にしてくれた。

広くて清潔で快適。
ただし、お風呂に脱衣所がなく、
すりガラス越しにシルエットが見えそうで、
そこだけは少し落ち着かなかった。
それでも、
本当に疲れていた体に、
優しい女将さんと快適な宿は何よりの救い。
布団に横になった瞬間、
「ああ、今日も生き延びた」と思った。
2022年9月28日水曜日
20番鶴林寺~21番太龍寺
歩行距離 約22km
所要時間 10時間2分
使ったお金5,277円 7日目までの合計 47,903円
・交通費 0円
・宿泊費 4,000円(民泊 日の丸商店 素泊まり、朝食お接待)
・洗濯代 100円(洗濯 0円、乾燥100円 30分)
・食 費 577円/カップ麺、パン、自販機お茶
・御朱印 600円(20-21番)
・その他 0円


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